「ゾロ、ウソップ、ちょっとキッチンに来てくれ」
振り向くと光の差すハッチから獣の影が見えた。だがそれよりも梯子の根元に立つ人物に面食らう。
「…いつから居た?」
首をぶんぶん振ったウソップは逃げるようにして去った。それに舌打ちしてからゾロは思い直す。気づかなかった自分がどうかしていたのだと。
振り返ったらサンジはもう眠っていた。握られた手をそっとほどいて船医の招集に従うことにする。起こさないように、夢を見せないように、そっと離れた。
「この前の海賊船…サンジは相手の船で戦ってた。おれは見てなかったんだけど、何か変なことはなかったか?」
船長が首を傾げた。心当たりはないが推測できるのはひとつだ。
「何らかの攻撃ってことか」
「能力か、もしくは毒かしら」
俺の言葉に頷いてロビンが静かに言った。
「わからない。でもおれは毒物じゃないかと思ってる。問題は傷や痛みのことだ。サンジがおれたちに隠していたのか、それとも気づいてなかったのか…そっちのほうが重要なんだ」
「どういうことだ?」
傾げるどころか首を折っているルフィには溜息もでない。
「傷があるなら痛いはずだろ?そう感じないってことは神経系統が麻痺してるのかもしれない。まだ検査待ちだけど…」
「それってまずいのか???」
疑問符が余計に増えたと同時にゾロが席を立った。ナミは慌てて声をかける。
「ちょっと!ゾロ、どこいくのよ」
まさかサンジだから興味もないというのだろうか、だとしたらあんまりだ。二人が見た目ほど仲が悪くないのを知っている。もちろんゾロが心配しているのも、本当は他の仲間と同じように想っていることも。だから納得がいかなかった。
「…サンジのとこだろ?」
小さい声はウソップだった。
既にドアノブに手をかけながら、ゾロは盛大に舌打ちをしてみせる。サンジが倒れた直後にも見せた、苛立ったような仕草。
「直接聞いたほうが早ェだろうが」
たったそれだけ言って出て行った。
(また、あの背中だわ)
ナミは人知れず嘆息した。
04へ