act.3
大体ラブホテルなんていうものは猥雑な場所に建っているもので、そういう所は治安も良くない。
女の死体がひとつくらい転がっていたって大して不思議でもない。
今まで彼女と組んでいた腕のにおいを確かめて、サンジは違和感に眉を顰める。
「クセェ…早く風呂入ろ…」
ホテルの一室で彼女は眠っている。もう目覚めることはないだろう。全ての元凶は得体の知れない人間を同じテーブルに着かせたことだ。少なくとも彼女にとっては。
真実はもっと遠いところにあるが、それは彼女にとってもサンジにとってもどうでもいいことだった。
ホテル街を抜け出しするりと人の波を避けていく。そのうちに駅についた。改札をくぐれば丁度電車が来たところ。
サンジが駆け込むと電車は滑り出した。
ぐちゃぐちゃになったシーツの中でぐちゃぐちゃに縺れあう。サンジは胸に芝生頭を抱きながら息を大きく吸い込んだ。
「やっぱゾロのニオイ…」
すんすんやると今まで大人しくなっていたゾロが上向いた。
「あぁ?さっき風呂入ったぞ。それに今はテメェも変わらねェよ」
二人一緒に居るのだから当然だ。しかしサンジが言うのは単体のにおいの話ではない。
「クセェっつってねェし。いやテメェはたまに臭いけど。そうじゃなくて俺らのニオイと奴らのニオイは違ェんだよ」
「そうか?気付かねェな…」
ゾロもすん、と息を吸う。今吸っても気付くはずがないのに。間抜けさにサンジは仄かに笑った。
「お前、近寄らずに斬るじゃん。ニオイなんてわかるわけねェよ」
「ああ…あの時クセェって、あの女のか」
「人間臭ェのが取れなくなりそうで気になんだよ」
サンジはもう一度ゾロの頭皮に鼻をつけた。
「もうちっとで帰れるんだから我慢しとけ」
「あと20?」
「今日で19」
「そっか。それで…」
「おしまいだ」
平坦なはずのゾロの台詞がやけに寂しそうに聞こえて、自分の妄想癖に笑えてしまった。ゾロのような冷血漢が寂しいなんて思うはずがないのに。
サンジが息を漏らして笑ってもゾロは何も言わなかった。
2← →4