おくりもの++
電話をすると機嫌の良さそうな声がして、行ってみればやっぱり鼻歌なんて歌っていた。アメリカ国家だ。
「よーお、ご機嫌だな」
「そうかい?」
「美味いスコーンでも食ったんだろ」
「なんで知ってるんだい?美味しくはなかったけどね」
ぼろろろろ、とシェイクを啜る音がうるさい。それが一段落すると今度はポテトを貪っている。
こいつはどれだけ食うんだ?
そんな粗悪な油物ばっか食ってるから太るんじゃないのか。
口に出したら喚きそうなのでやめておく。
「でもいつもの殺人的なヤツじゃなくて、まあ食べれた」
「お前の“食べれる”はドイツなら食えるかもしれないが、俺には無理だ」
「やっぱり」
「何」
「言うと思った」
軽く笑うと手の油を拭いてデスクから立ち上がる。こちらの応接セットにどさりと腰を下ろすとやっとこちらに目がいったらしく間抜けな声を出した。
「あー、何それ、もらったのかい?」
「アーサーからな」
「え」
「きれいだろ?」
庭の薔薇で作ってもらったブーケだとは言わない。イギリスが俺に花束をくれるはずがないのに。
「イギリスが…」
簡単に信じるもんだ。
ショックだってのがバレバレだぜ?
心の中でほくそ笑みながらその花に鼻を寄せると薔薇の芳香が立ち上る。共に生けられた霞草も綺麗だ。
「お前はスコーンもらったんだからイーヴンだろ」
悔しそうな顔をしているアルフレッドを見ながら笑ってやった。
「あんなのテロじゃんか!」
精々喚いてろ。
結局のところあいつはお前のことを心底では憎み切れないまま曖昧な顔をしてる。お前はあいつが突き放すことも手を伸ばすこともできないのを無意識に知っていて胡座をかいていやがる。
まさに親と子供。過保護なお兄ちゃんと何にもわかっていない身勝手な弟。
解ってないなら俺が何しても構わないだろ?
掻き回そうが奪い取ろうが、こいつらはなんにも気付かない。
「お前には毒物一歩手前のテロがお似合いだぜ?俺は美しく薔薇のブーケ。あいつもわかってるじゃん」
にやにやしながら言ってやるとぶすくれた顔で花束に手を伸ばした、が勿論届かせてやるわけがない。俺はひょいと小さなそれを少し手前に躱した。
「待遇が違う…」
文句を垂れるからまた笑ってやった。
わざわざ作って待っているのと、強請ってやっと貰えるもの。どちらが良い待遇かなんてわかりきっている。
でも真実を知っているのは俺ひとり。
それで、手元の花にまつわる話を思い出した。
「薔薇って“秘密の象徴”って意味があるんだぜ」
薔薇の生けられた部屋での会話は他言無用。中世にあったルールからこの花にはそういう意味がある。
「それがどうかしたのかい?」
「ホントのことを知ってるのは俺とこの薔薇だけだってこと」
アルフレッドもアーサーも知らない二人のこと。
知っていても教えてなんかやらない。
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