おくりもの
唐突な電話で目が覚めた。アメリカ野郎がこっちに来るのだと。一方的に捲し立てられて、嫌だと言う間もなく切られた。
そんな鬱陶しい目覚め方をしたもんだから折角の休日でも気分が悪い。午前中ののっそりした陽気に欠伸をしながら時計を眺めた。
結局あいつが来ると言ったのは今から五時間も先だ。
二度寝するわけにもいかず仕方なしに起き上がってバスルームに向かうとぼさぼさの頭が鏡に映ってちょっと真剣に寝癖を直した。
「はいこれ土産のチーズバーガー」
とすっと置かれた紙袋は随分と軽い。おそらく一人ぶんしか入っていないのだろう。なにせ昼時ではない。
「もうちょっとティータイムに合うもん持ってこいよ。まあこれはこれで美味いけど…」
「ドーナツのほうがよかった?」
「あー、うん」
どっちでもいいけど。口の中だけで答えてその包みを開けた。油のにおいが強いそれを手づかみに食べると案外小さかったらしく一口で三分の一になってしまった。かつかつと食べ進めるとあっという間に終わり、その間にアルフは勝手にソファを陣取っていた。
指についた油を舐めると俺を指差して、
「下品」
とわざと笑った。
いつも言われている仕返しのつもりかよ。
「うっせーな」
それきりキッチンに引き上げる。
気に入りのウェッジウッドのティーセットを用意して、あらかじめ湧かしてあったポットでカップを温める。茶葉を蒸らす時間はきっちりと計る。出過ぎないように…。そればかり注視しているとすぐ後ろに迫る影にも気付かなかった。
「紅茶?」
「うおっ」
「君の出すもので一番美味しいから、楽しみだな」
本当に一言多い奴だ。
「さっきスコーン焼いた」
指差すとあからさま嫌そうな顔をするもんだからムカついて頭を叩いた。ぱすんとイイ音がして少しは気が晴れる。
「俺様が焼いてやったんだから食え」
カゴごと渡すとアルフは一つとってそれをぽいと口に放りこむ。さくさくさく。軽やかな音がしているうちに煎れた紅茶をダイニングに運んだ。カゴを持ったままソファについて紅茶を一口。
「いつもよりは美味しいかな〜。食べれるレベルになってるよ」
こんな評価ですらちょっと嬉しいと思うのが悲しい。普段の扱いがひどすぎるんだ。そう思うしかないだろう。
「いつもはスポンジか!?ってくらいモソモソしてるし。粉の塊みたいな味だし。」
「……そこまで言うか」
わざわざ作った俺を馬鹿にしてんのか?
思わずスコーンを投げつけてやりたい気分になる。
「まあフランスだったら犬に食わせるんじゃないかな」
にぱっと笑うな。
まだ温かい紅茶を頭から浴びせてやりたくなったが辛うじて留める。能天気な面のままアルフはもうひとつスコーンに手を伸ばした。
「あ…?」
文句言ったくせに食べんのかよ。言う前に口の中に消える。
「俺はこれでも美味いけどね」
またさくさくさくと食べるのを見ていて、五時間の余裕は無駄じゃなかったか…と思ったのは絶対に言わない。
米+英