[友人関係]
「悪かったな」
珍しくゾロが謝ったのでナミはむしろ謝りたくなった。
「なによ、やめてよ」
あの、何とも言えない、途方に暮れたような、居心地の悪い空気を壊したのはナミだ。自分も買い物に行きたいから早めに出たい。ブランチを強請ることでサンジを嫌でも席から立たせたのだ。
そのあと男二人は何事もなかったように食事を済ませていたので大したことではなかったのかもしれない。それでもナミはあのとき手を貸さずにはいられなかった、実際出したのは口だけれど。
ナミはゾロが弱くなってしまうことが嫌いだった。彼は心身ともに強靭だ。でも対人関係にはヘタクソで特に恋愛はからきしだめだった。感情を持て余してしまうのか上手く立ち回ることができないのだ。そのせいかゾロは恋をすると楽しいよりもそれに振り回される自分が嫌になって辛くなる。ナミはそんな彼を助けてあげたいと思ってしまう。ただでさえ難儀な性癖なのだから困難だろうが、大切な友人には幸せを願う。
「…今はまだ早いと思ったのよ。あのままじゃボロ出そうだったじゃない」
「ボロって?」
「バレるか、言っちゃいそうだったもの」
自分はホモで、男にしか興味がなくて。サンジのことが好きだって。
「そしたらサンジくんはきっと、あんたには会わなくなるわ」
「…なんでわかる」
「あたしなら気があるって誤解されそうなことはしない」
「見込みがねェってことか?」
「あると思うの?」
ゾロは無言で歩く。横顔は無表情のままでそのどこにも感情は見あたらない。それでもナミには自分の言葉が少なからず傷つけたとわかっている。
「ごめん。でも諦められないなら少しでも見込みができてからのほうがいいじゃない」
負ける勝負はしたくない。ゾロはいつだって強い男なのだから。