二人の時間
「邪魔された」
ふてくされてゾロはベッドでごろごろしている。ナミの来訪がよっぽど気に食わなかったようだ。それでも心底怒っているわけではないらしく、さっきからサンジの腰にまとわりついたり腿を叩いたりする。大の男がするには可愛らしすぎるその仕草にサンジの心はぐらぐらきている。
夜中の二時半。頭を撫でると芝生はまだ濡れていて、ゾロはいつもそのまま寝てしまう。サンジが真似すると寝癖がついて翌日たいへんなことになるので休みの前の晩しかできない。今はもう金髪はドライヤーによってさらさらと保たれている。
「もう寝ようぜ。眠ィ」
「ああ…この章まで」
サンジは眠る前の読書が日課だ。子供の頃、よく図鑑の説明文を読みながら寝てしまうことがあって、そのせいでついた悪癖は学生時代の成績悪化に一役買った。教科書を読めば授業中に居眠りをし読書感想文もろくろく進まなかった。そんなサンジが読書に目覚めたのは読書家のロビンの影響だ。ロビンが貸してくれた本を読んでから眠る習慣が何年も続いている。活字はふんわりと優しい睡魔を連れてきてくれる。
「ふぁ…あ、ねみ…」
「だったら寝ろよ、明日寝坊すんぞ」
「だから、ここまで読んでから……あ!」
ベッドサイドにある電気を弱くされて文字が暗闇に呑まれてしまった。悔しさにゾロのほうを睨むとすぐさまキスが寄越される。
「俺と睡眠より本が大事か」
「…わかったよ」
ぱたんと本を閉じてサイドテーブルに置く。その伸びた体をゾロが抱きしめた。サンジは危うくバランスを崩してベッドから落ちそうになって慌てた。持ち直してから落ちる心配がないことに気が付いた。どうせ落ちそうになっても後ろにいるのはサンジよりよっぽど屈強な男だ。抱え直してくれるに違いない。
「おやすみ」
「おう」
二人して位置を直しながら、すぐ近くの呼吸の音を聞きながら眠った。