嫉妬の先
少しだけ濃くなったダージリンは渋い。添えられたミルクを注ぐとふわりと白い靄が舞った。
「なにが?」
ゾロは渋くなっていてもストレート派なのでまったく関係なく飲み続けている。ただ工夫をするのが面倒臭いのだろう、とナミは分析しているが真実は定かでない。
「お前らがどうにかなるとか、くっだらねえ妄想だ」
吐き捨てる言いぶりは疲れているような気がした。
「あんた、見かけも性格も男くさいくせにけっこう嫉妬深いのね」
「そうかもな」
以前のゾロは相手のことを気に入ることはあっても深く束縛するようなことはなかった。ついてこいとは言うが行かないでとは言わなかった。けれどサンジ相手なら縋りつくどころか捕まえて放さないつもりだろう。
「怖いわねー。気をつけてねサンジくん」
弱く笑うサンジはきっとまだわかっていない。ゾロがどれだけ執着しているのかを。
自分もこのくらい執着する恋をしてみたい、と思ったけれど口にはしなかった。本気の恋愛は楽しさの倍くらい苦しいのだ。来るべき時がくるまで。それまで自分はゆっくりと寂しい独り身を楽しもうとナミは思う。
「ゾロの場合、包丁じゃなくて刀だもんね」
ナミがニヤと笑ってみせるとサンジも今度こそ笑う。
「じゃあ俺が包丁か」
当然どちらも大事な得物をそんなことに使うわけがない。それでも全く関係のない話でもない。きっとこの二人は今まで大事にしてきた得物くらい、相手のことを大事に想っているに違いないからだ。
「ごちそうさま」
ティーカップを置きながら呟いた。