甘いもの
「サンジくん、甘いのが食べたい……みかんのやつ…」
ナミは傷心していた。仕事で手痛い失敗をしたからだ。失敗覚悟の仕事をしているからいちいちクヨクヨするほど暇じゃないが、それでも落ち込むくらいはある。
『どうしたんだい?』
電話ごしで優しい声を聞いて少しほっとしたものの、失敗を素直に話すにはプライドが邪魔をして、黙ったままになった。それでもサンジは電話を切らないでいてくれる。
『店はオレンジでデザートだせるよ』
「ううん、サンジくんのがいいの」
うんと甘えるつもりでわがままを言った。今日も明日も夜中まで仕事がある彼を捕まえてデザートを作ってほしいだなんて随分勝手な話。そう解っていて、断られてもいいと思った。でもどこかで女至上主義のサンジが断らないだろうことも解っていた。
『今日は早めに帰らせてもらうから、十二時くらいにウチに来て。ナミさんのためだけに腕を振るうよ』
きっと彼だって疲れているに決まっている。恋人が居るからには夜中に家にあげるのも躊躇われるはずなのに。快諾してくれるサンジはやっぱりいいやつだ。
「ありがと」
一流コック特製の極上スイーツを食べれば仕事だってなんだって頑張れそうな気がした。