先生と生徒
今までだって働いていたが花屋と編集者ではまるで勝手が違う。花屋はあまりに安寧としていてロビンにとっては止まった時間のようだったのだ、と離れてみて思う。
季節毎に好きな花を見ながら過ごし注文があればとりあえず受ける。店番が暇なときは好きな読書をし、訪ねてくるサンジと茶を飲む。そんな和やかな生活も素敵だったが忙しく働いているのも自分には合っているのだろう。
ロビンは店にいたが客がいなかったのとアルバイトが働いてくれているので悠々と書類の整理をしていた。手元の書類をバインダーに仕分けしたりノートパソコンで必要事項を調べて書き込んだり。
それをひょい、と覗くのはたったひとりの従業員、ゾロだ。
彼はなんとあの“かわいい彼”だった。当初の一瞬こそ驚いたものだが今となっては確かにそうなのだと感じている。出勤前にふらっと立ち寄ったサンジと居るときの笑顔が可愛らしいのでロビンは微笑ましくそれを眺めている。
「どうしたの?」
「あのな、訊きてェことがあるんだが」
「何かしら」
振り返って尋ねてみるがゾロは言い淀むだけでちゃんとした答えが返ってこない。彼には珍しいことだ。
サンジの言う通り、ゾロはいい意味で男らしい。竹を割ったような性格とでもいうのか、きっぱりとしている。もちろん例外もあるが。
「仕事のこと?それともサンジ?」
「…?どっちだかわからん」
その時点でも判別できないようだ。仕事と恋人が入り交じった内容とは。
「お花のことかしら?」
「この近所にでかい公園があるだろ。あそこのフェンスにくっついてる花が…」
「サンジに訊かれたのね」
先週配達の途中で通りかかったときに見た気がする。
「何色だったの?」
「赤っぽいのと白いのがあった」
ぴんときてロビンは手元にあったノートバソコンに向き直る。検索ボックスにぱちぱちと打ってエンターキー。表示された写真をゾロに見せる。
「すげぇな。これ何てんだ?」
サンジは花に大した興味がない。愛でるだけの感性は持っているが料理ほどはうまく覚えられないようだった。そんな彼が戯れに訊いたことをわざわざ調べてもらおうなんて、やっぱり微笑ましい。
ロビンはその花の名を教えてあげた。