[彼と彼女]
サンジも初めてだった。
今まで育ての親にすら彼女との関係を話したことはない。ミステリアスな美女は多くを語らないがサンジが知っていることは多い。
自分たちはお互いを好いている。そのくらいは理解していた。
だがそれが恋愛ではなく親愛であることも同時に理解している。
「テメェとのことを相談したのはロビンちゃんだけだ。俺がそういうの喋れるのは彼女くらいだからな」
昔から、サンジは同級生と会話や放課後のサッカーはしても、内面のことを話す相手はいないまま大きくなった。そしてそれを当たり前だと思っていた。サンジにとっては学友は顔見知り程度のものか愛すべきレディたちであり、自分の中身を語るような対象ではなかったのだ。
高校生の頃、ロビンに出会った。それでサンジは人生の色々なことが変わった。
「彼女は友達で恩人なんだ。だから浮気なんて不誠実な真似はしねェ。…第一、俺が男と付き合ってるのも知ってるしな」
かなり惚れていることも、それで悩んだりしていることすら知っている。その相手と遊べるはずがない。それでも雇った男がそうとは知らなかったのだろうけれど。
むしろこっちのほうがそんな偶然に驚いているくらいだ。
こちらを睨むゾロは警戒心まるだしで目がぎらりと光っている。サンジは手負いの獣を手なずけるような気分で近寄った。
「それがお前とは言ってねェけどよ。相談に名前言う必要ねェだろ?」
そおっと手を出すと意外にも簡単に腕に触れられた。花を一輪持ったまま、ゾロはこちらを睨み続けている。中々間抜けな構図だった。
「………本当か?」
窺うように訊くもんだからサンジは同じくらい慎重に頷いた。それでも睨み続けるゾロの目元をなぞるようにするとやっと眼力は止んだ。おりた睫毛に指先が触れる。コシのある感触は見た目よりもずっとつややかだ。
目をつぶったままゾロは訊いた。
「信じてもいいか」
「おう」
答えると口元だけが少し笑った。