[三寒四温N]
「それで?」
二月の終わり、三寒四温の時期になりつつある。ナミがお気に入りのコートとブーツで出掛けた先はゾロの仕事場だ。
冷たい板張りの床を袴に裸足で素振りをする子供たち。それを眺めている、同じように袴に裸足のゾロ。剣道道場は凛とした空気に満ちている。
練習が休憩に入ったところを見計らってゾロを呼び出すと道場と繋がっている家屋へ案内してくれた。
一応もてなしの茶をいれる後ろ姿にナミは尋ねた。
「うまくいったの?」
「ああ…一応」
「なにそれ。一応って」
出された緑茶を啜りながら向かいに座るゾロを見る。
「あいつは恋愛感情じゃないけど、惚れさせるから付き合ってくれ、っつった」
ナミは思わず咽せそうになった。
「…あんたらしい、自信家な台詞ね」
「うるせえな、脈がありそうだったんだよ」
「え、そうなの?」
「偏見があっても俺ならゲイでも許せるんだと」
ゾロはすっかりいつもの調子だ。サンジと出逢う前の、最近の臆病な空気を忘れてしまったように本来のゾロに戻っている。ニヤリと悪人面で笑うのが新鮮にすら感じてしまいナミはほっとした。
「しかも抱きしめても抵抗もしねェし」
弱っちい時間はもうおしまい、ここからは強気なゾロが戻ってくる。だったら結果は見えている。
「落としてみせるぜ」
こうなれば最高にかっこいい男なのだ。