[バレた!]
嬉しいというサンジには閉口してしまう。まったくこの男は料理となると見境がなくなる。
ゾロが喜べば満足だと笑うので何とも言えない気分になりながら、その体を抱きしめる。そのうち階下から怒鳴り声がしてサンジが飛び上がった。
「おわ!やべェ、仕事だっ」
そのときにはもう遅かった。どんどん踏み鳴らして上がってきた足音の主は現れた。ゾロはそのグラサン男とサンジの肩越しに目があった。
「サン、………。」
サンジもその声で振り返る。
「げ」
ゾロが何を言う暇もなかった。サンジがバッと離れると同時に男は階段を即座に降り始め、サンジが口汚く叫ぶ間に消えた。
「ああ…バレた…」
呆然としたような言葉と同じようなタイミングで下から大声が聞こえた。
「サンジがホモに鞍替えだ!」
それでゾロはやっと口を開けた。
「意味つうじんのか?」
間抜けな問いには誰も答えてくれず、下の大騒ぎで言われなくとも解った。どうも“サンジがホモ説”は厨房中に浸透したらしい。いや、あの様子だと店中に広まったのかもしれない。さっき見たフロアには客が大勢とウエイターが居たがそちらにも聞こえただろうか。
可哀想に。
「バレちまって働きにくくなったりしねぇのか?」
「いや……茶化され続けるだけだ……」
思った以上に精神的ダメージが強そうで、ゾロはその頭を撫でてみた。さらさらの金髪は手に心地良い。
落ち込むサンジを尻目に、嬉しいと思ってしまう。社会性を大切にしていたり厳しい環境にいる人間はマイナーな嗜好を知られるのを良しとしない。不利なことのほうが多いからだ。緩い生活をしているゾロだっておいそれと公表したりはしないのだ。
それが、こうも簡単にゾロの存在を認めてくれる。
「親には?」
「別に何にも言わねえだろ。俺も大人だしな」
「大人って問題か?普通は泣くぞ」
「会ってみりゃわかるぜ。普通じゃねーよ、あの野郎は」
やれやれだ、と言わんばかりにサンジは首を振った。