[腑抜けが笑う]



 三時のティータイム。再びスターバックス。メールでゾロに呼び出されたナミは呆れながらもブラックコーヒーを飲んでいた。
 こんな甘ったるい惚気話なんてブラックじゃないと胸焼けしそうだ。

 「ふーん、良かったじゃない」
 ナミは惚気話を聞くのにうんざりしているわけではない。さっきから呼び出しておいてほとんど喋らないゾロに呆れているのだ。何か聞いてほしいから不躾に呼んだくせに。
 席に座って、ゾロが語ったことと言えば。
 昨日はサンジの家に行って、ケーキを食べた。それで、初めてシた。朝になったから帰ると言ったら引き止められた。昼飯を食って、とりあえず家を出た。
 これだけ。
 何を恥じらっているのやら。以前はナンパされたから男三人でセックスしたと眠そうに語った男の面ではない。サンジを好きになる前は縋られても切り捨てたり、告白されてもセックスしておしまいにするくらい、ひどい男だったくせに。
 恋はこんなにも人を変えてしまうのかと教訓にできるほどだ。
 「…じゃあ不満でもあった?」
 まさか性行為で幻滅した、とでも言うのだろうか。百年の恋も醒める?
 ナミの知る限り、サンジのセックスは悪くない。女を大事にする彼らしくスマートで甘い。逆に言えば男くささが足りないので強引ではない、不満を感じるとすればそのあたりだろうか。こちらは体験していないが聞く限り、ゾロはそこから対極だ。
 と勘ぐってはみるもののゾロの説明じゃ役回りもわからないので、結局のところ推論も立ちやしない。
 「いいや、ねえよ」
 ゾロはまたココアを飲んでいる。彼は特別嗜好もないが普段は選ばないだろうし、このまえ呼び出されたときにも飲んでいた記憶があるので何かネガティブな話かとナミは身構えていたのだが、予想に反してゾロは穏やかだ。というよりどこかぽーっとしている。
 また覇気のないゾロに逆戻りしていた。
 「すげぇ良かった」
 なんてコメントしてほしいのだろう。計りかねているうちにゾロは勝手に言を続けている。
 「ずっとしてればよかった」
 「アホになるわよ」
 思わずつっこむとゾロは眠そうな目を向ける。
 「てめえ、あいつと何で別れたんだ?あんなにイイのに」
 ゾロは体の相性が良ければ付き合っていられる。これまでで実証済みだ。
 「それが嫌だから別れたわけじゃないわよ、別に彼氏じゃなくてもいいと思っただけ」
 そのあたりナミも複雑なのである。今でこそ親友とくっついているから納得しているが、サンジの横に美女がいて幸せそうにしていたらどこかしら目を逸らしたくなったのかも、しれない。
 ふーん、と興味なさそうな相槌を打ったゾロははっきりと言い切った。
 「まあ、俺はもし嫌でも別れねェだろうなあ…」
 「じゃあしないでいるの?」
 「ガキの飯事みてぇだな」
 くくく、とゾロは笑う。
 それを見てしまったから、ナミは今日くらいゾロの幸せオーラ撒き散らしセールに付き合ってやることにした。