[銃弾回避不能]
ケーキを食卓で切り分けた。ホールだが直径が小さめなので男二人でも無理はない。少し細めに切って彼の前に差し出す。ブラウンの皿にゴールドの華奢なフォーク。食器も料理には大切な要素だ。
「ガトー・フロマージュです。どうぞ召し上がれ」
シンプルな、所謂チーズケーキだ。
「…いただきます」
一口をおそるおそる食べてからは結構なハイペースで食べ進める。あっという間に無くなりまたワンピース切り分けた。サンジも席について食べるがその間にもゾロの皿はなくなっていく。
美味いから進むのは一目瞭然だ。
結局、ホールはほぼゾロが食いつくした。ゾロは両刀遣いだから予想はしていたが少しは残るかと思っていたのでサンジは少々面食らう。
「すげえな」
「何が?」
空っぽになっている皿は清々しいとしか言いようがない。コック冥利に尽きるってもんだ、とサンジは緩い溜息をついた。呆れと嬉しさの塊は不幸になんてならない。
「全部なくなっちまったからさ」
つい笑いながら言うとゾロは本当に不思議そうな顔をした。
「こんなもん作るテメェのほうがすげえだろ」
職業柄作れて当然というか、褒められるところではないとサンジはわかっていたのだが、どうしてもゾロに言われるのは弱い。嘘も冗談もない彼の言葉はいつだってストレートで、サンジの心にするりと入ってくることができる。防御壁なんて意味が無い。
サンジはいまいち自覚がないが押しに弱いだけとも言える。はっきりぐいぐい来られると流されてしまうわけだ。真っすぐ意思表示されて強引に来られると情につけこまれるタイプだった。
にやつきそうになるのを堪えているうちに次の銃弾が飛んでくる。
「毎日食えりゃあ最高だな」
もうサンジは何も言えなかった。