[ゾロの事情]



 付き合い始めて二週間。未だに慣れない。
 「てめえの悪趣味にはついていけねぇ」
 嘘だ。サンジ相手ならば何だってついていくかもしれない。
 『まあそう言うな、惚れてるくせに』
 笑う声に、意趣返しを思いついた。
 「おう、…わかってんならいい」
 これは嘘じゃない。ゾロの気持ちを自覚してくれているならからかったって構わないのだ。
 急に本音をぶつけられてたじろいだのか、一瞬の間があってからサンジはゾロを家に誘うという本題に入る。それに二つ返事する自分はサンジの手のひらの上なのだろうとゾロはわかっている。
 休憩中にかかってきた電話だって見計らってかけたのだろう。今日ならば夜が空いているのも知っていたかもしれない。ゾロはサンジのスケジュールの子細を把握できていないが彼はそういうところに目敏いのだった。

 子供から大人まで、道場生は様々居るが子供の割合のほうが多いこともあり午後から遅くても九時頃までで終わる。ゾロはそこからトレーニングをすることもあるが仕事は夕方で終わりということになっている。
 だからバイトは暇な午前から昼までか、それからということになる。割合自由の利く立場がゾロには都合がいい。なぜなら彼はいつでも眠れるので寝過ごすことが多いからだ。現実、それでバイトをクビになったことがある。
 サンジと付き合うようになって、ゾロはバイトをほとんどしなくなった。今までは生活費確保の他にも持て余し気味の時間を有効活用する意味があったが、それはサンジがいればいい。待つ時間も悪くはない。だから最低限しか働いていないがそれまでに稼いだ分があるので当分生活に困ったりはしないで済む。
 そういう風にサンジ中心で回ってしまう自分に呆れる反面、それが恋なのだろうと開き直っているゾロである。





恋に振り回される男