[ケーキと恋人の有無]



 サンジはケーキを作るのが好きだ。料理はその時々で出来が変わるから、甘さやスポンジの焼き具合も全てひとつずつ違うことになる。作る相手のことを考えたり現在の気候や季節で量や素材が違い、また日々の自分の気分だって左右するのだ。どんな料理だってそうなのだがその中でもケーキは特別なのだった。
 ゼフに作ってもらったケーキにいつもわくわくしたのを覚えている。つまりサンジにとってケーキとは料理に対してのときめきそのもので、幸せな時間の象徴だ。
 だからそれを誰かに与えることが嬉しい。

 「うっし、完璧!」

 自分の誕生日すら自らケーキを作る習慣は誰かに奇特だと言われることもしばしば。しかしサンジは誰かに料理を食べてもらうことが嬉しい、だから黙って食ってくれれば気分がよろしい。だからこそそのケーキを誰かに食わせてしまう。
 去年はロビンだった。ナミとは一年も付き合っていないので残念ながら食べさせることはできなかったが。今なられっきとした恋人がいる。ロビンの手を煩わせなくてもよい。

 取り出した携帯電話で着信履歴を操作する。何回かの音のあと相手が出た。
 『何だ』
 素っ気ない反応にサンジはつい笑う。
 『…何笑ってんだよ』
 「いや、四回のコールの間を想像してた」
 きっと彼はちょっと驚いてから戸惑ったのだろう。
 『てめえの悪趣味にはついていけねぇ』
 「まあそう言うな、惚れてるくせに」
 サンジはふざけて言ったのでかわされると思ったのだがゾロは予想外にも肯定した。
 『おう、…わかってんならいい』
 ますます、笑ってしまう。
 「お前、今日休みだっけ?」
 本題に入る。今日ばかりは副料理長にも年に一度の休暇願が執行される。普段は店自体が休みになる定休以外まるで休みを取らないサンジだが誕生日くらい恋人が居れば休んだりもする。
 だから三月二日の午前中からケーキ作りに勤しんでいたのだ。
 『道場の稽古はある、バイトはねえな』
 それはリサーチ済み。
 「だったら夜空いてんだろ?うち来いよ」
 これに対する答えも予想済み。
 『おう、終わったら行く』
 ゾロはサンジの誘いを理由無く断ったことが無い。





ケーキの必要性と恋人の必要性