[遅いランチ]



 久しぶりにサンジの店にランチを食べに来たが彼は何にも変わらずに働いている。
 「いらっしゃい、ナミさん」
 そう言って歓迎してくれる笑顔は以前と何も変わらない。けれど水面下、彼の中身は確実に変化している。ナミと付き合っていた頃とはまるで違うはずだ。それなのにサンジの女性をもてなす姿勢はひとつも変わっていなくてナミは再確認する。
 自分はサンジのことがとても好きだ。

 ナミはバラティエに食事以外に目的がある時はわざと昼終わり頃を狙って行くことにしている。仕事が一段落した時間帯はサンジも多少の暇を作れるからだ。そうすれば昼休憩としてナミのテーブルに座ることくらいはできる。副料理長の立場はこんなときに便利である。
 「うまくいってる?」
 「多分ね。時間はかかるけど問題ないよ」
 もちろん議題は芝生頭のホモのことだ。
 サンジのいれてくれた紅茶を飲みながら本日のデザートに舌鼓をうつ午後はちょっとだけ贅沢な気分にさせてくれる。同じテーブルにいるのでティータイムに付き合わせているサンジは一応気を遣っているのか煙草を吸わずにいた。
 「キスできるんだってね」
 紅茶に咽せた彼が落ち着くのを待ってナミはもう一言つけ足す。
 「セックスはしたの?」
 「ストレートだね…」
 「ゾロが教えてくれたのよ、サンジとキスするのは最高だったって」
 しれっと言うとサンジは明らかに困った顔になる。ナミに追求されると軽々しく嘘も言えないサンジは狼狽えるしかないのだ。それを承知で詰問するのが基本形だ。
 「…キスしかしてないって。それ以上はまだ、心の準備ができてねェし」
 「あら。キスできるならできるでしょ」
 ナミはセックスするよりキスのほうが重いだろうと思う。好きでなくてもできることと、好きじゃないとできないこと。明確に分けられる。
 うーん、と唸って首を傾げる男は本当に弱り果てた様子だ。
 「それにしてもゾロが褒めるんだからよっぽどよかったのねえ」
 もう少し苛めてみようと揶揄ってみたら、とぼけたわけでもなくサンジは口端をあげながら言った。
 「ナミさんだって知ってるだろ?」
 こういうところがゾロのツボなのかもしれない。
 ナミは逆にこういうところがどうも、友達のほうがいいなあと思ってしまうのだが。
 ゾロが最高だと思ったのはゾロにとってサンジが最高の相手だからなのね、と言いたかったのにその真意は汲めない男にナミは溜息を吐く。