[二つの真実]
唾がやけに粘ついたように感じて飲み込むのが慎重になる。サンジの口は重かった。
質問の答えはもうわかった。
「イエスってことか」
ゾロは何も答えなかったが笑い飛ばさない反応が逆に真実なのだと報せる。驚きに見開かれたその瞳が髪の色よりずっと濃いのだと、サンジはこのとき初めて気付いた。
表情に驚きと哀しみのようなものが混ざっているのにも気付いたから、サンジは慌てて言葉を接ぐ。
「別にそれがどうとかじゃなくて」
「――そうだ。俺は女に興味がねえ」
話を遮るようにゾロは言う。今にも泣きそうなくらい歪んでしまった顔にサンジは言葉を失った。それでもそう見えたのはサンジだけで、本当はいつもより少し眉間に皺が多いくらいで、ゾロの仏頂面は変わっていない。錯覚したのは傷つけたという意識のせいだ。
「隠してたつもりはねぇが言えなかった…悪ィ。気持ち悪ぃなら」
言葉を失ってしまったサンジでも咄嗟の感情表現くらいはできた。
「俺はンなこと言ってねェだろ!」
思わずカッとなって叫んだ台詞は紛れもない本心だ。そんな風に思って尋ねたんじゃない。サンジは質問したのであって詰問したわけではないのだ。
それなのに傷ついてしまったゾロはサンジの言葉を真っすぐ受け取ってくれない。だから結局、言葉を尽くすしかない。拙かろうが浅はかだろうがサンジは自分の気持ちを語らなければと危機感があった。もしここでしくじったらゾロは二度と自分に会わない気がした。何故か確信にも近く予想できた。
「もし俺がゲイに偏見があったとしても、それがゾロなら構わねェ」
しかしサンジはわかっていなかった。自分が何故そこまでゾロに固執しているか、絶対に手放してはならないと一種の恐怖感すら抱いている理由を。
見えた真実、気付かない真実