[ナミの賭け]



 サンジの様子を見るためにそれとなく家を尋ねた。彼はいたって普通でもちろん出された紅茶もいつも通りおいしい。
 まさかゾロと何かあったの、とは訊けずナミは本題に入れずにいた。

 「サンジくんはまだ彼女できないの?」
 「できてたらこんなに軽々しくナミさんを家に入れないよ、勘違いされちまう」

 出勤前の時間、サンジはゆっくりと過ごす。仕事が忙しいので自分の時間はすべてそこに充てて好きなようにしているのだ。副料理長である彼は希望しない限り昼前には仕事をしなくていいらしい。仕込みや整備などの仕事は新人がやるものだと言っていたのでサンジもかつては朝から出勤していたのだろうが、今はランチ前に行けばいいのだという。それでも気まぐれで朝から仕事をしている時があるのは彼が如何にコックの仕事を愛しているかわかるところだ。家でも他人のために料理をする、寛ぐための時間ですらも料理に使う。
 サンジのそんな、一途で不器用な熱心さはナミの愛するところである。またゾロとサンジの共通点だろうと思う。つまりナミはそんな真っすぐなところを持つ二人が好ましい。

 「ゾロはいいの?」
 「え?」
 「ゾロは勘違いされない?」
 いきすぎた行動かもしれない。でもナミはサンジが男を対象に入れることなどないとわかる。ならば少しでも望みがあるようにゾロを範囲に入れておいたほうがいいのではないか、そう思った。だから賭けに出るのだ。
 恨まれても笑ってやろう。ナミにはもうひとつわかっていることがある。
 想いに応えられないとしても、まるで知らない相手でも、サンジは真摯な人間を邪見にしたりはしない。もしゾロが好きだと言ったら断るにしても彼を嫌いになったりはしない。断言したっていい。ゾロが望むなら友人関係を続けるだろう。ましてやサンジは彼を気に入っている。男として以前に人間として好きなのだろう。
 きっと、ゾロに言ったのもそういう“好き”だ。
 「家に入れて誤解されるのは女の子だから?」
 だったらそこから恋愛の“好き”になる可能性だってあるんじゃないかとナミは思うのだ。
 「男とか女とかじゃなくて、ゾロをちゃんと見て」
 サンジは真剣な空気を感じたのだろう、ナミを窺うように見た。話をわかりかねているのかもしれない。でもそんなに鈍い男ではない。だから直截言ってはやらない。それは本人が伝えるべき言葉だから。
 「気に入っているなら向き合ってよ。あいつは不器用なの。」
 サンジは紅茶を一口飲む。それから微かに笑った。
 意味がわかったのかどうかナミは尋ねなかった。あとは二人の問題のような気がするからだ。





おせっかいさん