[夢から醒めて]



 目が覚めたら昼近かったのでサンジはとりあえずキッチンで水を飲んだ。
 気怠いのは二日酔いだろうか。自分が寝ていたソファ近辺にはごろごろと宴会の残骸が落ちていたし、結構な量を飲んだ覚えがある。
 いつ眠ってしまったかは覚えていなかったのが多少不安だが、それは一緒に飲んでいても全く酔っていなかった彼に訊けばいい。

 リビングに戻ってしばし歩き回る。
 「ありゃ…帰ったのか?」
 玄関に行けば靴はある。サンジは片っ端からドアを開けてみようかとも思ったが冷静になってみれば水音が聞こえる。風呂場だ。
 「ゾロ」
 彼は洗面台に頭を突っ込んでばしゃばしゃと顔を洗っていた。呼んだらゆっくりとこちらを向く、その動作がひどく疲れているように見えたのでサンジは手近なタオルを投げてやる。ぽたぽたと水が垂れてはゾロの肌の上を滑って転がっていく。
 「何ぼーっとしてんだよ、風邪ひくぞ」
 動かないゾロに疑問を感じてサンジは声をかけた。それでもゾロは何の反応もしない。だから仕方なしにタオルを被った頭を力任せに拭いてやった。
 「っ、アホ!自分でやる!」
 しばしされるがままになっていたくせに急に抵抗しだしたゾロはサンジを振り払ってタオルを奪い取る。そのままがしがしと巻き添えに濡れてしまった髪を拭いた。荒々しい動作はひどく子供っぽい。
 「何、照れてんの?」
 戯れに訊くとゾロはわずかに顔を顰める。
 「からかうな」
 そういえばサンジは以前自分が同じ台詞を使ったことがあるのを思い出した。あのとき、ナミとゾロが紅茶を飲みに来訪した日だ。指摘したサンジに対してゾロは思わぬ反応を返したのだった。
 それで、サンジは違いに気がつく。
 「――もしかして、怒ってるか?」
 ゾロがわかりやすく驚いてしまったので、サンジは自分が何かしたのだと思い当たった。