[瞳を閉じて]
かわいいだって?
赤面を見られないようゾロは必死だ。とはいえ密着して真横にあるサンジの視界に入りはしないだろうが。
「緊張しすぎじゃねェの。心臓ばくばくいってる」
自分の台詞を使われた上に揶揄されてもゾロは何も言えない。
いま口を開けば何が飛び出すかわからないからだ。
「…ゾロ?」
体がほんの少し離れて顔を覗き込まれた。サンジの表情は真面目と言ってもいいくらい普通である。そんな具合だからゾロは自分だけが切羽詰まっているようで余計に赤面してしまう。
その手が左頬をそっと包む。
食物に魔法をかける手が。
「ゾロの目ん玉の色、緑なのに黒っぽいよなあ。この前気付いたんだけど近くで見るとちゃんと緑色だ」
まるで感心したような口振りにどう答えていいのかわからずゾロはつい憎まれ口を叩いてしまう。
「…ンなの、俺には見えねェ」
「だったら目ェ閉じとけ」
言われるままに閉じた。
ゾロは思う。自分の瞳の色なんかよりもよっぽどサンジの眼のほうが気になる。あの美しい色合い、スカイブルー。でも空よりも海のほうが似合う。崩れ始めの白波がハイライトで、深い色は深海だ。その奥に何があるのか容易にはわからない。
そんなことを考えていたら息が塞がった。
ぱちりと眼を開ける。
青い瞳は見えなかった。閉じられているせいで睫毛が金茶色だと知っただけだ。
キスされているので驚嘆の声は出なかった。