[ハートを貫く]
いきなり突き刺された気分がした。鋭い刃でざっくりと胸の一番柔らかな部分を、貫かれた。
「ゾロ」
サンジは思わず握られた手を握り返した。ハートに刻まれた刀傷が生んだのは痛みではなく衝動だ。ぐわっと込み上げる何か。
その何かは愛しさ。
サンジは今までこんなにゾロを大事に思ったことはなかった。
「何だ?どうした、急に」
驚いた顔をするゾロがサンジには苦しい。
欲しいと言うくせに望みはちっぽけで、些細なことで幸せだと満足して。本当はそんな男じゃないくせに。獣じみた本能で行動するタイプのくせに、恋をするだけでてんで弱っちい子供みたいになってしまう。
その原因の全てが自分であることにサンジは震えた。
この真っすぐで健気な魂が自分のことを愛していると言うのだ。
「あー!俺の贅沢者!!」
サンジは狼狽えているゾロの手を引き、その体を抱きしめてみた。やっぱりそれはがっしりとした男の体であり、あまつさえ自分よりほんの少し背が高い。ガタイもいい。サンジは硬直するゾロの後ろ頭を掴んでみたが当然、緑の短髪だ。
かわいい女の子じゃないのに。
「サ、サンジ、どうした?」
この間は男らしくサンジを抱き竦めた腕がまごつきながら腰のあたりに置かれる。その様子はどうにも慣れない少女のようだ。本当はまるで違うのにどうも錯覚する。
「テメェにかわいいとか思うなんて、終わってる…」
どうかしてる。このゾロに女の子に使うような形容詞を用いるなんて自分は末期だとサンジは沈み込みそうになった。
サンジはロビンに言ったことをすっかり忘れていた。ゾロをかわいいと思っていたのは随分前からだというのに。