[世界の色合い]
残念なことに今晩のサンジは酔わないように心がけているらしい。ペースも落ち着いているし自作のつまみも食べている。ゾロとしては酔った隙に一気に距離を詰めようかと思っていたので狙いが外れてしまった。
ダイニングテーブルの角に直角。きっとサンジは嫌でもこの前のことを思い出しているのだろう。
思えば自分たちはこの家で何か起きることが多い。
「緊張しすぎじゃねぇのか」
「…しょうがねェだろ、困ってんだよ。どんな顔すりゃいいんだかわかんねェもんで」
「普通の顔してろ」
「テメェなあ…」
「こうゆうのがダメなのか?」
ゾロはグラスを掴んでいる右手を握ってみる。
面白いようにサンジの指が強ばった。
「ッ…そうだよ!遊んでんじゃねェ!」
つい笑ってしまったら本気で睨まれたのでゾロはやっと笑いをひっこめた。遊んでいるのも確かだが正確には楽しんでいるだけなのでちょっと真面目な顔をした。
ゾロは嬉しいのだ。
「前ならこうしても首傾げただけで終わってたはずだ。でも俺のこと何か思ってるから反応すんだろ」
それが恋愛対象に見られているんだと確かめられて嬉しい。
些細な幸せだ。それではまだ恋人とは言えないのかもしれないが、それでもゾロには以前とはまるで違う世界だ。自分が愛しいことを伝えれば拒まれずに彼に伝わるのだから。触れても許される今は、焦がれるだけだった以前とは別世界と言える。
「それだけでも俺は満足してる」
微かに甘い空気を齎しているのがサンジだというだけでゾロにはどうだっていい。