[用意周到]
部屋に入るなり抱きつかれて少し驚いた。関係性が変わったのだ。多少甘ったるくなるのは承知しているが変化が急すぎてサンジは着いていけてない。
「冷てえ。髪くらい乾かして来いよ」
耳のすぐ脇で声がする。
「急に呼んだのはテメェだろうが…」
後ろから回された腕が力強くてサンジがこれまで相手してきたものとは決定的に違うのだと思わせた。下手をすれば自分より太い腕だ。腕力だって敵う自信がない。腹を圧迫するそれに絡めとられて動けないまま、二人は寒い玄関に立ちつくしている。
それでも外よりは温かい。ここは風もないしさっきまで暖房がついていた屋内だ。しかもサンジの背中には熱源が張り付いている。
「茶でも入れてやるから離せ」
口実だ。第一彼が何故サンジの家にいるかもわからないのだから。会いたいと言われただけで理由なんか無かった。ついつい自分の家に連れ帰ってしまったがそんな約束もしていない。
というかサンジはゾロの住処を知らないのでどうしようもないのだが。
この時間ではファミレスくらいしか開いていないし、そんなところに行っても仕方ないだろう。
「酒じゃなくてか?明日休みだろう」
呆れた。何も聞いていないような顔をして、ちゃっかり覚えているのか。
「よくご存知で…」
「知ってて来た」
「……」
本当に呆れた。