[それぞれの距離感]



 実は電話をかけた時、ゾロは既に外に居た。サンジが断らないことを見越してだ。
 だから当然すぐに駅までついてしまう。終電も終わった駅は誰もいないので昼間のにぎわいを忘れてしまったかのようだ。それだから風景が違って見えてしまいサンジの家までのルートをより一層覚えにくくしている、とゾロは思っている。
 携帯電話をぱかりと開いた。二時二十分。そのときちょうど足音が聞こえた。
 「悪ィ、これでも急いで来たんだけどな」
 サンジだ。それでもゾロは首を傾げた。
 「なんか…ガキっぽくねーか、いつもより」
 「あれ?お前でもわかんのか。失敗したな」
 照れ隠しのように髪をいじるのでゾロはまた気付いてしまう。
 「髪も」
 お互いの距離はもう十分近かったので一歩踏み出してその金髪を掴むとひどく冷たいことに驚いた。
 「濡れてんぞ?」
 湿った髪は重く少しクセがあるようにうねっている。乾いているときのサラサラ具合とはまた少々感触が違うので思わずゾロは頭を撫でた。
 するとサンジが一瞬固まった。

 慣れていないのだ。仕方ないと思うもののゾロは気負わせてしまっているのだと気付く。それでも触れることをやめようとは思わず早く慣れろと考える。自分勝手だがそれを許したのは紛れもなくサンジ自身だ。
 「風呂上がりだったから適当にあったかそうな服着たんだよ」
 ぐい、とゾロを押しやりサンジはさっさと行ってしまう。
 その顔が少し赤かったのはゾロの贔屓目ではない。