[仮設懺悔室]



 ゾロがへこんでいると長い付き合いのナミにはすぐにわかってしまう。
 「…さっさと言ってよ、聞いて欲しそうな空気ださないでくれる?」

 何だか知らないが呼び出されて行った先は駅前のスターバックスだった。昼過ぎ、人はあまりいない。目の前の席に座っているゾロはいつもの頼りがいをどこかへ置き忘れてきたようで、申し訳ないがへたれた熊にも見えそうだ。
 さっぱりざっくりしているのが彼と彼女の共通点であり、お互い快く思っている部分なのに。これではあんまりだ。
 「どうせサンジくんのことでしょ。あんまり黙ってると放置するわよ」
 丸めていた背中がふとこっちを見る。
 目のふちが赤い。ナミは眉をひそめた。
 「嘘よ、ちゃんと聞く。どうしたのよ…あんたがそんなになっちゃうなんて。何があったの?」
 「…顔に出てんのかよ。情けねえな、俺は」
 「普段が出なさすぎなの」
 ゾロはどこかぼんやりしながらストローに口をつける。飲まずにまた離す。また銜える。くりかえしているだけだ。

 暖房の効いた店内は乾燥しているのでナミはさっきからオレンジジュースを口にしているが、彼は喉の乾きもないらしい。無気力というか現実に生きていないようにふわふわとしているゾロが急に心配になって、真剣な声で名を呼んだ。
 曇る瞳がやっとナミを映す。ほっとするよりも先に、それが普段の彼が持っている芯を完全に無くしてしまっていることに心が痛んだ。
 ゾロは滅多なことじゃ弱音を吐いたりしない。それなのに。彼を根底からおかしくする何かがあったのだろうと推測して、その原因はひとつしかないと思い当たる。ナミは唯一の可能性を恨めしく思った。ゾロにこんな風に苦しんでほしかったわけじゃない。
 ぶん殴ってやろうかしら。ナミは本気でそう思いかけた。
 だが次の言葉で思い直す。

 「キスしちまった、サンジと」