[二つ返事]
「起きてるかー?」
寝ぼけた声が少し遅れて返答する。
『…んァ?誰だよ…』
「寝ぼけてんじゃねェよ、俺だ」
『俺?……。』
「サンジ」
見えない相手が覚醒したのがわかった。短い驚きが十分伝わったからだ。どうやらゾロは熟睡中だったらしい。
「寝てたか、悪ィな」
現在時刻は夜中の二時。サンジにとっては仕事終わりの時刻だが世間一般的には丑三つ時が近い。寝ているのが普通だ。それでもゾロは夜勤のバイトをしているのかと思っていたので電話したのだが。
「バイト無かったのか今日は」
『夜勤減らしたから…』
「じゃあいいわ。起こしてごめん」
思えば身勝手な用事である。わざわざ寝ている子を起こしてまでするようなことじゃないのでサンジは電話を切ろうとした。
けれどゾロは慌てたような声で静止をかけた。その声があまり聞いたことないくらい切羽詰まっていたのでサンジは眉をひそめる。
本当に対した用事じゃないのに。
『待てよ!何だよ、用件があるからかけたんじゃねえのか?』
「あー…明日休みだからうちで飲まないかって誘おうと思っただけだ」
つい歯切れが悪くなった。思い立ったまま電話を繋いでしまったが随分とわがままなことを言っているのに今更気付いたからだ。サンジが休日でも世間では平日だ。ゾロがフリーターのような生活をしていても用事があるのかもしれない。たとえば朝方仕事があったりとか。
『いや、行く。今からでいいのか?』
「うちわかるか?」
『駅から…右?』
「…それって全然わかってないぜ。俺はまだ店にいるから、そっち来いよ、んで一緒に帰ればいい」
休憩室で一服しながら電話をかけたのだ。あとは店の戸締まりをするだけで出れるようにしてある。
「もうちょっと煙草吸ってるわ」
箱にはあと三本しか残っていないがそれまでには来るだろう。来なかったら煙草を強請ることに決めた。