[繋がり]
二月の最初の日になったばかり。それでもバラティエは客が居れば深夜一時まで営業している。この日の客も十二時過ぎまで居たのでサンジは厨房でその時間を過ごした。
それから片付けやら下拵えやら掃除やら。なんだかんだで一時を過ぎて着替えて一服したらもう二時頃だ。
早くも二本目を吸いながら戸締まりをして裏口を出る。コートとマフラーをしていても真冬の夜道は凍えそうだ。サンジは平熱が低いせいか、ただでさえ寒がりである。真夏の厨房には耐えられても冷凍倉庫の中は到底耐えられそうにないとよく思っているのだ。
(寒すぎだろ…)
もう真っすぐ帰宅したい。こんな寒空の夜に寄り道なんてせずにさっさと温かい風呂に入って眠りたい。
それでもゾロのことが気になった。
教えてもらったコンビニは煌煌と明るく、そこだけ生気があるようにすら見える。客の入りよりも明るさが温かく見えるのは何故だろうか。
ドアを開けたら品出しをしていたゾロが振り向いて、目があった。
「――あ」
「…よう、生きてんじゃん、やっぱ」
顔は変になっていないだろうか。なんだか妙に緊張していた。間接がうまく回らないようなかんじがして首の動きが不自然になってはいないだろうかと不安になる。
ゾロはちょっとだけ驚いた顔をしたけれどすぐに立ち上がってサンジのほうを見つめた。
「生きてるに決まってんだろ」
「まあ、な」
そりゃあサンジだって本気で生死を心配していたわけじゃない。真面目ぶって返したゾロに言葉が詰まって、ついナミの台詞を思い出した。
「お前、コンビニの制服似合わねェなあ」
「うるせえ。つうかンなこと言いに来たのかよ」
茶化すとしっかり嫌そうな反応を返してくれるからゾロは単純で好ましい。サンジもそういうところがあるからすぐケンカになるのだが、ゾロとのケンカはそれなりに楽しいから平気だ。
「いや、生存確認と連絡確認だ」
サンジはちょっと真面目な顔をしてみる。ケンカは別の機会でいい。今は本題が重要だとすぐに切り替えて制服姿のゾロを見た。ちなみに店内には二人以外誰もいないのでさぼり放題だ。
「俺さぁ、考えたら全然テメェのこと知らなかった。会おうにも携帯も知らねーし。だから教えとけよ、今」
はい、とポケットから出した携帯を差し出す。機械のくせにサンジの手より温かなそれをゾロは不思議そうに手に取った。
「…これでか?使い方わかんねェよ」
サンジだって機械はあまり得意じゃないのだ。できればやってほしかったのだが、仕方なく慣れない操作をして一人でゾロの携帯のアドレスを呼び出してメールを送る。本文は省略した。あとはそれに返信。
「ほらよ。あーあよかった、これでもうクソ寒い中いちいち寄らなくて済むぜ。会いたかったら呼び出せばいいもんなー」
一仕事やり終えた気分である。サンジは引っかかっていた小骨がとれたように鬱屈がなくなった爽快感で思わずへらっと笑った。ゾロは携帯を見つめている。
ぴんぽーん、と天で音がした。
客が来たのだ。振り向くと若い男が雑誌のコーナーへ曲がる。ぼーっとして接客を忘れたまま立っているゾロは何も言わない。仕方なしにサンジは声をだした。
「いらっしゃいませー」
ぱっとゾロが顔をあげた。
「俺、寒ィの苦手なんだ、早く温まりてえから帰って寝るわ。んじゃちゃんと仕事しろよ?」
これ以上邪魔をしちゃ悪いを思ってサンジは早口に言うと入り口へ向かう。
「…おう」
ゾロはそう返事をしただけだったがサンジには連絡することの了承に聞こえたので、その晩機嫌良く眠りにつくことができた。
二月の始まりは上々だ。