[駅前と花束の行方]
仕事前、彼女は駅構内にあるカフェに注文されたものを届けるのだと言うのでお供させてもらうことにした。よく晴れているので洗濯してから早めに自宅を出た。それからロビンの店を覗いたのだ。
中くらいの花束とアレンジメントフラワーと小さな観葉植物。ピンクと紫と白で構成されたものがビニールと臙脂の薄紙でくるまれている。アレンジメントのほうは赤と白の様々な種類の花でつくられていた。観葉植物は手のひらに乗ってしまうくらい小さな鉢に肉厚の葉っぱが生えている。
その緑色を見て、似たような色彩の髪を思い出した。
綺麗だな、というとロビンはありがとうと返す。
レディに重いものを持たせたりはしない。サンジは一番軽い鉢を持ってもらうことにして散歩を楽しんだ。
花束以外は構内にある店に届けるというので持つ担当を交換して、配達し終わるのを駅前で待つ。
冬の晴れた正午にコートはいらない。
平日。いい天気の中で人々が行き交うのを何となく眺めていると自分がやけに浮いている気がした。ブラックのスーツに花束を持っている男。これから誰かに愛の告白でもしに行くようだ。
「おまたせ」
ロビンが駅から出てくる。光沢感のある薄手のコートがよく似合っていた。
「はい。俺が持ってるとじろじろ見られちまう」
「あら、似合ってるわ」
「よしてくれよ。確かに花は好きだけどさ、花束なんてあげる相手もいねェのに」
煙草を銜えるとロビンはまた笑った。
「コックさんにくれる子はいるんじゃない?」
ライターで火をつける。
「まさか」
ふと留めた視線の先には、近視感のある色彩。
サンジは無意識にその名前を呼んだ。