[宣言]



 電話はすぐに繋がる。

 『もしもし』
 「サンジくんのお店でランチ食べない?」
 ちょうど時間が空いたのはラッキーだった。ナミは美味しい昼食にありつけるとささやかな幸福に顔を綻ばせる。その幸福のついでにゾロを誘うのもアリだろう。
 『…あー』
 いつもは二つ返事で了解するゾロが歯切れが悪い。それだけでナミにはぴんとくる。
 「何かあったのね?」
 返事がないので勝手に話を進めるとする。
 「まさか早まって振られたの?」
 あまりにも無視し続けるのでナミは図星なのだろうと判断しかけたころ、やっとゾロが口を開いた。
 『違ェよ!適当なこと言うんじゃねえっ』
 「だったら何よ」
 『あー…俺マジであいつ落とすことにした』
 どこか覇気がないわりにはっきりとした重大発言だ。
 ゾロが本気だとナミは知っていたが、真剣にアプローチする気がないのもわかっていた。恋愛に弱気なせいで傷つくことを恐れるから砕けるようなマネはしない。それがゾロの恋愛パターンだった。
 それなのに、どうしたことか。
 粉砕覚悟でも構わないくらいのエネルギーを燃やしている“好き”なんだと、ナミは初めて気が付いた。
 「…やっぱ、何かあったんでしょ?」
 何もなかったらゾロはプライドを捨ててまで賭けにでない。
 『誰かのモンにしたくねェと思った。俺のモンにしてえ。だから何しても落とす』

 ナミはその落ち着いた声を聞きながら、大学時代、試合の時に見たゾロの眼を思い出していた。獲物を狩る獰猛な野獣。そのぎらついた瞳は食らいついた首筋を離さないまま獣の血を啜る。
 サンジは兎なのだろうか、それとも野獣を騙し抜く狐だろうか。