[レベル]
「諦めれば?」
サンジの働くレストランにて、ナミは真面目そうな口ぶりで言った。本当は呆れているが食事を奢ってもらっているぶん普段よりは当社比二倍くらいには親身さを持って答えていた。とはいえ彼女はこの件について割合ちゃんと取り組もうと決めていた。なにしろ発端は自分が原因だとも言えるのだ、それなりに責任を感じているのである、これでも。
「相手が悪いわよ」
今夜のコース料理も美味しいしもちろんワインも抜群の相性だ。日常涼しい顔しているのにただいま厨房の中で汗をかきながら働いている男が作った料理と選んだワイン。彼は女性至上主義である。ナミにはそんな男がゲイに迫られて頷くとは到底思えなかった。
ゾロは何も言わずにいる。わかっているのだそんなことは。自分の勝ち目の薄さは十分理解しているけれど。
「引き下がれねェレベルだ」
「なら、もう押し倒しちゃえばいいじゃない。」
面倒臭さを隠しもせずにナミは言う。確かにな、とゾロは頷いてみせた。それは手っ取り早い、だが完全に犯罪である。訴えられなきゃいいだろうと暗黒なことを考えてみてからゾロは逆にそうしない(できないというべきかもしれない)理由も考えてみた。ワインを一口飲んだらもやもやした意思が固まって表現に成り、ぽろっと口からこぼれ落ちた。
「趣味じゃねェな」
チラっと見た先にはサンジが給仕をしている。俺はあいつを蔑ろにしたいわけじゃない、手に入れたいだけだ。一時でもいいから自分を見てほしいだけだ。ゾロはそう思いながら甘い溜息をついた。その視線の先にはいつもサンジがいる。
諦められない