5:筋書きにない触れ合い





 もう一方の手が頭を押さえつけずとも、俺に抵抗の意思はない。
 だというのにゾロは耐えきれないと言わんばかりに口付けを仕掛けてくる。ぶつかるような勢いだから、がちりと歯が当たったがどちらも気に留めない。俺はまだしもあちらにそんな余裕はないようだ。
 舌が歯の裏をまさぐった。
 「――っふは、ゾロ待て、っ、んぅ……」
 喋る隙間も与えてはくれないらしい。
 思った以上に――いや、思った通り、乱暴な男だ。
 「待てって」
 ぐい、と体を離すとやっと隙間ができた。俺は唾液であんまりな状態になった口元を手で拭う。濡れた感触が生々しい。
 ゾロの目がぎらりと光った。獰猛な肉食獣のように艶めく瞳は黒っぽく沈んでいるが確かな力を持って俺を射抜く。
 「おれは好きでもねェ奴とは付き合えない、女の子ならまだしも、お前みたいな完璧に男なやつとキスなんか、好きだからできるんだろーが」
 さっさと気付けよ。そう言うとゾロはぎゅう、と俺を抱きしめた。






 サンジはいいにおいがした。髪の毛からするからシャンプーかもしれない。それと微かに焦げ臭いにおい。煙草だろうか――家族にヘビースモーカーでもいるのかもしれない。
 すん、と嗅ぐとサンジがくつくつと笑う。
 「もしかして臭いか?」
 「ん…煙草か?」
 「でかける前に一本吸っただけなのに、よくわかるなあゾロ」
 「お前吸うのか?」
 うん、と頷いたのが肩でわかる。
 こんな些細なことも知らない俺たちだけれど、これからもっと知ることができる。
 それが嬉しい。付き合うと言われたときよりも、ずっと。

 先週の同じ時間、俺は何をしていただろうか?
 サンジを抱きしめているなんて想像もできなかった。
 「ゾロの目ってさ、黒っぽく見えるけど本当は緑なんだよな」
 「そうか?」
 自分じゃ見えないから知らない。まじまじと顔をのぞきこんでくるサンジの顔は至ってマジメだ。
 「おう。緑色は地毛で芝生だろ?」
 芝生かよ。あんまりな言い草に反論もない。
 「確かに元からこの色だが…それがどうかしたのかよ」
 腕の中の体がくくくと笑う。
 「緑色の目がきれいで、好きになったんだ。おれは」
 俺よりもよっぽど大層な告白をしてくれるもんだから、ついまたキスをした。
 サンジはやっぱりくくく、と笑っていた。





書いた日081228ぐらい