6:また会いましょう。だからいまはさようなら。
「じゃーな」
結局、ゾロとしたのはキスだけだ。ぎゅうぎゅう抱きしめられてベッドでごろごろしてたくらい。
だから小学生みたいだと笑った。それでもいいとゾロは言った。
先週の今頃、俺は何をしていたっけ。確か店の厨房で仕込みをしていた。あの日はまるで思いつきもしなかった。男の恋人ができて夕方別れるのが名残惜しくなるなんて。
「明日は会えねェから、月曜な」
手をひらりと振ったらそれを掴まれた。
「なんで明日は無理なんだ?」
ゾロは普通の顔をして言う。干渉しそうな性格でもないからただの疑問だろう。束縛してもいいのに、なんて思ってしまったことに笑うしかない。今までの俺ならそこまで自分の内面に入れることを許さないだろう。無意識下で避けたはずだ。
それが、どうだ。
知られることを厭わない。
「バイト」
ちなみにうちの高校はバイトは許可制だがもちろん申請書など出していない。あれは理由がなければいけないのだ。学費が出ないとか家庭が貧乏とか、何かそういったものが。だからうちの生徒がバイトしていると言えば学校側に無断だという暗黙の了解がある。
「お前、違反ばっかだな」
「そうか?」
ゾロが笑うから、余計に名残惜しくなる。
俺は掴まれた手をそのままにして、空いているほうでゾロの首裏を引き寄せる。ここが住宅街の道の真ん中だとかどうでもいいんだ。俺はキスがしたい。この男の驚く顔が見たかった。
「な…」
「びびった?」
ぐりぐりと頭を撫で回したら呆れられた。
まったく、掴めない。
「誰も見てねェよ」
「そういう問題じゃねえだろ…」
飽きたらしく踵を返すその手を掴む。どうしても名残惜しいのだ。離したくない。陳腐な歌詞みたいなことを考えて、それでも言えない。
「平気だって。ちゃんと明日もあさっても、おれはお前の彼氏だから」
俺の不安など全てお見通しなのだと言うように手を握り返される。
「月曜になりゃまた会える」
サンジは俺の手をそっと離す。そしてその手をまたひらりと振った。
「そしたら学校でキスしようぜ」
秘密の悪戯を考えたとばかりにくすりと笑うもんだから。俺は仕方なく笑ってやる。
「じゃあ仕方ねえな」
あの渡り廊下でキスしよう。先週の月曜日を思い出しながら。
だから今は手を振ってやるよ。
「じゃーな」
新しい関係で朝を始めよう。
書いた日081228ぐらい おしまい