2:不器用な優しさ



 ゾロはメールしかしない。それも滅多に寄越さない。
 電話も、家に尋ねてくることもない。それはゾロなりの気遣いであることを俺は知っている。
 もちろん自身が受験生だということがあって勉強に時間を割いているのも理由だが、その理由の大部分は俺に対しての気遣い。ゾロは勉強に力を入れるタイプではない。塾にも行かずこつこつ自分でやっているくらいだ。
 部活も三年生だから引退しているし、特に趣味もない。
 ストレスなんか無さそうな構造だが溜まらないわけでもないだろう。
 そう勝手に理由づけて俺は電話をする。
 メールしかしないゾロに付き合っていたら声を忘れてしまいそうだから。




 三年生。学校は既に受験体勢で、授業も自習ばかり。受験組はガリガリ何かやっていて進学組はだらだら遊んでいる。もう合格と決まっている連中も後者に混じっている。
 俺はといえば自習をいいことに学校をさぼって店に出ているだけ。今まで夜しかできなかったからジジイにはバイトとして扱き使われていたが、朝から入れればちゃんと仕事をさせてもらえるのだ。一日も無駄にはしたくなかった。
 だから学校に行くことは少なくなり、ゾロとは毎日会えなくなってしまった。
 これからはもっと会えなくなるのだと嫌でも考えてしまう。




 「あ?わざわざ出て来んなよ、寒ィだろ」
 マンションの入り口、ゾロが立っていた。
 「ンな薄着で…この時期に風邪はシャレになんねーぞ」
 「風邪なんか引かねェ」
 自信満々で言うわりに部屋着のままだから手なんか凍りついてるみたいだった。両手で握りしめるように温めてみるが俺の手もそこそこ冷たいせいで効果はない。
 「ほっぺた真っ赤だぞ」
 林檎病というのを聞いたことあるが、こんなかんじになるのかもしれない。覆い隠すように頬を包む。
 「さみィ」
 仏頂面がいい。眉間に寄った皺は照れているせいだ。この場合は。
 いつもの仏頂面との見分け方はサンジの贔屓目による。
 くっくっく。
 笑いながら手を離す。少しだけ温かくなったのはきっとゾロの温度が移ったからだ。そうやって何かを分けることはほんの些細な確認なのだけれど、サンジにとってはひどく大切なものだった。
 繋がりが薄くなりつつある二人にとってはこの夜更けの密会がこんなにも大切だ。
 エントランスに向かって駆け出すと夜のにおいがした。





書いた日0901不明  短め